日本語力でもって外国語を学ぶ

ドイツ語圏にて母国語でドイツ語に取り組むことの意義

 国際語に代表される各種言語系統から離れ、大陸との交流を経て独自の発展を遂げた現代日本語。それは本来、美しく、柔らかで、情緒や感覚のひだを生き生きと表現する言語です。その柔らかさ故に文法構造は崩壊しやすく、たとえば助詞や接続詞の誤用によって文意が伝わらなくなるという事例は、正に日本語の特徴として多々見られるもの。一方で、厳密な格変化や文法上の性に表れているように、非常に強固な文法構造を持つドイツ語。これを母国語とする者の間で最も頻発する間違いであるスペルの混乱がどれだけ起きようとも、それが書き損じや覚え違いの範疇のものである限り、文意そのものが不明となることはまずありません。

 簡単に「○○語ができる」「流暢に話す」と言っても、該当する母語話者のクオリティに近いレベルでの発話および読み書きを「習得」することがどれほど困難なことか、それはそもそも自らの母国語を本当に学ぶことの難しさに立ち返れば自ずと理解されるもの。ましてやこれほどまでに構造と機能の違う二言語を並行して駆使するというのは、ゲルマン語族内でドイツ語と英語を同時に学ぶこととは比べようもなく、大変な労力を要する作業です。今日の天気やテレビ番組の話をすることは何とかできるが、それよりも先に進めない。語学学校や大学の外国人向けコースでドイツ語を勉強したが、ドイツ語でドイツ語を学ぶ段階には至っておらず、そこに英語が混じって更なる混乱をきたし、そのまま現地生活を始めたがために、何年、何十年と在独していても文法が理解できていない。ツールとしての日常ドイツ語は使えるが、込み入った話は未だに分からないし表現もおぼつかない。そんな日本語話者の声をとても頻繁に耳にします。

 

 懸け橋プロジェクトでは、ドイツにてクライアントの母国語である日本語を使用してドイツ語を学ぶ・理解することの重要性を伝えています。東北大学文学部を出、ドイツでヨーロッパ史を専攻した講師による授業は、Landkreis Passauにて開講され、日本人駐在員や留学生が抱えていたドイツ語の謎の数々をこれまでに紐解いてきたもの。ご興味をお持ちの方は、下記メールアドレスまでご連絡くださいませ。